この辺さすがパリです。
日本じゃどう頑張っても遭えないです、実際。


9月20日、パリ管のコンサートに行ってきました。
開演10分前、一緒に行ったマイミク・あゆみクラとホール前でバゲット・サンドをかじってたら、目の前を悠々と通り過ぎる黒服の男性は 1st solo Flutist、ヴァンサン・リュカ氏でした。
早く行きナよ。。笑
ちなみにこのとき食べたバゲットは2006年度のコンペで1位受賞のバゲットでした。
別に高くもなくてまいうーです。


今までずっと改装工事中だったホールはかなり新築の家みたいな臭いがしたけど、3階バルコン席は割とぎりぎりに押さえた席のはずが素晴らしい眺めでした。
始まる前のこと、今夜の指揮者を務めるはずだったアルマン・ジョルダン氏が今朝逝去されたとのことで、全員で起立・黙祷を捧げました。
今夜のコンサートもまた氏に捧げられます。



ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲
 今夜のコンサートに行くキッカケにもなったプログラムは、かの我等が同期で発足させたブラスバンド、その名もアヴァンセW.O.を彷彿とさせる内容だったからでもあります。牧神然り。当時、今は東京の某オケで活躍する同期M田が素晴らしいソロを聴かせてくれましたが、この有名な冒頭は10分前までホール外をぶらついていた余裕のヴァンサン・リュカで始まりました。うますぎて鳥肌が立ちます。2年前の夏にニースで聴いて以来彼の演奏は大好きですが、やはり今夜もバケモノなのでした。曲自体は、牧神の指だか手だかに乗り移ったなんらかの妖精のお導きで牧神がお一人でなさるというあられもない内容なんですが、しかし素晴らしい曲です。


・アンリ・デュティユー:チェロ・コンチェルト(solist:グザヴィエ・フィリップス)
 デュティユーはオーボエのためにもなんとも暗い、それでいてアクティブな、且つぷ〜んとする素晴らしいソナタを書いています。チェロコンは初めて聴きましたが終始わりに静かな曲でした。時々なんとも形容し難い素敵ハーモニーを奏でる金管セクションがかっこよかった。演奏終了後、なんか指揮者もチェリストも客席に向かって拍手してんなーと思ったら、デュティユー本人が客席にいた! 見事な白髪でよろよろ舞台下まで赴く様子は不安なだけにより感動をそそりました。氏は1916年生まれ、今年で90歳の誕生日を迎えます。そういうわけでパリのオケでも今シーズンはデュティユーの曲を沢山取り上げています。そんなこんなで、もちろん演奏は素晴らしかったんですが、そんなことそっちのけではしゃぎました。


ドビュッシー:Six Epigraphes antiques, エルネスト・アンセルメ編
 「6つの古代碑」とかって訳せばいいんでしょうか、ちょっとよくわかりません。もとは1914年に連弾用に作曲されたようですが、アンセルメが1932年にオケバージョンにした編曲したらしいです。その名の通り6つの曲から成っていて、ドビュッシーらしい可愛い曲です。でもなんかこうドビュッシーらしい繊細なオーケストレーションではなくて、あんまりさやか好みではなかった。牧神の後だから余計に感じます。ドビュッシーと思わずに聴けばいいんだと思う。


ラヴェル:スペイン狂詩曲
 大編成の曲って、今まで降り番だった人たちがゾロゾロ舞台に上がってきて、始まる前からわくわくするのは自分だけでしょうか。かつてアヴァンセW.O.で前半プロのトリだった曲で、さやかは何故かチェレスタを弾きました。改めてオリジナルを聴くと、あの弦の細かいパッセージをこなしてたクラリネットの皆さん方には本当に頭が下がります。おつ。スペイン人よりスペインのエスプリを持っていると謳われたラヴェルですが、これを聴いてドキドキしない人はいないんじゃないでしょうか。終演後の聴衆の盛り上がりも結構な勢いでした。各ソロの皆さんのヴィルトオーゾっぷりも然ることながら、さやかはマラゲーニャのラッパのソロに心を奪われました。あとやっぱりTrb.は相当かっこいいですね。あのスライドさばきにはどうにもこうにもやられます。それっきり金管セクションに釘付けです。ミュートとか使い放題です。カップ? ハーマン? ワウワウ? なんかよくわからないけど何種類も取ったり付けたり、魅力的すぎ。挙句の果てには吹きながら次の音でミュートON!とか。明らかに反則です。完全にさやかをやっつけるための行為だと思われます。


 実はデュティユーあたりから薄々感づきつつあったんですが、金管の人って吹くときに動かない。それに留意しながら最後まで聴いてましたが、結局ラヴェルの最後で盛り上がりの頂点に達しても誰一人微動だにせず終了しました。我等木管族はカラダの動きなしには演奏できません。しかもその動きは演奏の盛衰、音量の大小に大体比例します。たとえ単発のff!とかでもカラダでえいっ!ってやってる感が色濃く、オケ中でも木管2列は今えいっ!ってやってるな〜感が見え見えです。何あの前列でくねくねしてるヤツラ。それでもFl.やCl.なんてまだいいですよ、メリハリがあって。それに引き換えダブルリード族ときたら、いつまでもなよなよなよなよ動きやがって! というかそうでもしないと演奏困難な楽器なんです、実際。しかし金管の皆さん方を見て下さいよ。fff!の単発だろうがソロだろうが、構えるだけ構えてあとはビクともしないというなんとも勇ましい様なのであります。如何なる激しい曲でも涼しい顔して吹いてる姿勢は崩さないのであります。俺のシャウトは音で聴け!と言わんばかりです。しびれくらげ。かっこよすぎ。
 彼氏にするなら金管でしょうやっぱり。しかもTrb.キボンヌ。その次がラッパです。